2015年6月10日初版 著者:宮本顕二・宮本礼子 発行所:中央公論社
タイトル:欧米に寝たきり老人はいない<自分で決める人生最後の医療>
■プロローグ「だれもがふつかる終末期医療の問題。医療が発達したばかりに、自分で人生の終わり方を考えなくてはならなくなりました。だれもが最期は「ありがとう、さようなら」の一言を家族に言って、安らかに死んでいきたいと思っているのではないでしょうか。しかし、現代の医療ではそれがかないません。何もわからず、しゃべることもできないのに、寝たきりで、オムツをして、管から栄養をいれて、何年も生き続けます。痰の吸引は苦しいものです。手足が縛られることもあります。人生の最期にそんな姿になるなんて、だれが望んだのでしょう?・・・・確かに、今日のように、延命措置で何年間も生き続けたり、濃厚医療で苦しんで死んだりする責任は医療側にもあります。しかし、国民一人ひとりが、自分はどのように生きて、どのように死を迎えたいのかを考えないことには、この問題は解決しません。」
■北海道で医師として2012年から「高齢者の終末期医療を考える会」たち上げ活動を続ける宮本顕二さんと宮本礼子さんが、スウェーデン・オーストラリア・オランダ・スペイン・アメリカの終末期医療の現場を訪問し、寝たきり老人がいないことに驚く。
■「なぜ、日本では寝たきり老人が多いのか」という疑問に次の見立てを上げる。
1)生き方の違いが死に方の違いに反映している。欧米の人は「人生は楽しむためにある」「ベットの上で点滴で生きて、何の意味があるのか」「楽しいとかうれしいとかがわからなくなってしまっては、生きていても仕方ない」とはっきり言います。そのために経管栄養などで延命されることなく、思いっきりよく死んでいきます。
2)日本では自分の親ががん以外で死ぬことに納得できない人が多すぎる。
3)日本ではいったん開始した人工栄養や人工呼吸器装着を中止すると、警察が介入したり、訴えられたりする可能性がある。
4)医療制度の違い。ヨーロッパは公的医療機関が多く、人口の高齢化による医療費を抑制したい国の意向が医療に大きく反映される。アメリカの医療は民営であり、医療費を抑制したい民間保険会社の意向が医療に反映される。日本の場合、医療費を支出するのは公的機関であり、医療費を請求するのはほとんどが民間の病院。国が終末期医療費を抑制しようとしても、請求する側は経営のため濃厚医療を行う。