家族葬の風「天国の修行とは」

◆ 病院からご自宅までご遺体を運んだ。47才の奥さまだった。

◆ ご主人と中学生の娘さんはご遺体といっしょに寝台車に乗ってもらったが、高校生の息子さんは、私の車に乗ってもらった。ご主人は憔悴しきっていた。娘さんはうなだれていた。

◆ 賢そうな息子さんは、助手席でうつむいていた。中学生の娘さんと高校生の息子さんをかかえて、ご主人はこれから大変だろうと思う。
 「お父さんは、料理はできるの」と息子さんに尋ねてみた。
 「卵焼きとチャーハンぐらいですかね」と息子さんが答えた。
 「おそらく、お父さんはこれから1~2年間はお母さんを亡くしたことで寂しい思いが続くと思うよ。妹さんもお母さんが一番必要な時期だから、寂しくてしかたないだろうね。君も大変だろうが、お父さんと妹さんを助けてあげなくちゃいけないよ」と車中の中で話した。

◆ 奥さまは、七年前から癌と闘っていた。そのことは、ご主人しか知らなかった。夫婦で家族にも親戚にも知らせないように決めていた。息子さんも娘さんもお母さんが癌であることを知ったのは、三ヶ月前だった。
 奥さまは、闘病の辛さと不安をいっさい表に出さずに子供たちを育ててきた。明るい家庭を作ってきた。世話好きの奥さんは、職場でも子供たちの友人やその家族の間でも人気者だった。

◆ ご自宅に安置された奥さまに「やっと家に帰れたね。良かったね」と名前を何度も呼びかけながら、ご主人は泣きはらしていた。娘さんは死の現実を受け止められない様子だった。二階の自分の部屋へと上がっていった。

◆湯灌/翌日、湯灌をし、納棺をした。美しく蘇った表情は、うっすらと微笑んでいるようだった。「本当にありがとうございました」と湯灌のスタッフにご主人が深々と頭を下げた。

◆ ご主人が「今朝、息子が電気釜を触っていて、どうしたのと聞くと、これからご飯手伝うよというんです。もしかしたら、あなたが、何か言ってくださったのかと思いまして」と尋ねてきた。
 「そんな話、しましたっけ、でも息子さんしっかりしていますね。よかったですね」と答えた。

◆ 通夜も葬儀も終わり、数日して四十九日法要の段取りなどもあり、ご自宅に伺った。ご主人から質問を受けた
        Q: 葬儀の時に、お坊さんが故人はこれから極楽浄土で修行されますと説法があったんですが、娘が天国でどんな修行をしているのと私に聞くんです。うまく答えられなくて。私も、女房は自分のことより人のことを世話するのが好きだったので、修行はしないかもしれないし、修行は辛そうで、ちょっと胸が痛むんです。

◆ ご主人が悲しみから立ち直るのは、時間が解決してくれる。息子さんはお母さんの意思を受け継ごうと、お父さんと妹さんを支えることで悲しみを乗り越えるだろうと思う。しかし、気になっていたのは中学生の娘さんだ。その娘さんが「お母さんは、天国でどんな修行をしているの」とお父さんに聞いてきた。聞かれたお父さんも「修行」は腑に落ちない。

◆ 浄土真宗では、ご本尊の阿弥陀如来が故人をすぐに極楽浄土に連れて行ってくださる。故人はこの世で出来なかった修行をそこで(極楽浄土)で行い、菩薩になる。

◆    A: 私も極楽浄土に往ったことはないので何とも言えませんが、極楽浄土は、不安のない豊かな浄土のようです。煩悩で悩むことなく修行に打ち込める環境なんでしょう。自我の鎧を解き、素直に仏心を極めることができるのでしょうから、修行といってもこの世で考える苦行ではなくて、花を見て、茶をすすり、小鳥のさえずりを聞きながら、万物の真理、阿弥陀如来の仏心を悟ることができるのではないでしょうか。
 とくに奥さまは、世話好きだったので、すでに自我を殺す修行はされていたのかもしれませんので、極楽浄土では、早々に菩薩の位につくかもしれませんよ。菩薩ともなれば、どこかで娘さんやみなさんの幸せを願って、正しい道に進むように手助けをしてくれるはずですよ。そのために修行をされているのでしょう。
 奥さまは茶道を習われていたそうですね、茶道も修行の一つです。私たち凡人からすれば、お茶を飲むのにあんな面倒くさい飲み方をしなければいけないのかと思いますが、茶を極めれば、最も自由で豊かな飲み方なのかもしれません。自由で本来の正しい道(仏心)を歩むのが修行、この世では煩悩に取り付かれているために修行が苦行に映るのでしょう。
 ご主人も、奥さまと同じように茶道を始められてはどうでしょう。命日に奥様に茶を点ててあげてはどうでしょうか。そうすれば、娘さんにも修行の意味がわかるかもしれません。
しどろもどろで答えた。

◆    Q:    茶道ですか。いいかもしれません。なんでも既成のものを供えようと考えていましたが、お茶を点ててあげるんですね。これからどうしたらいいか、少しわかりました。何かなら何までお世話になってありがとうございました。また、質問があったらお願いします。


きょうの「ブレイクタイム」

平成29年4月29日(土)

大友克洋さん「バベルの塔」大胆解釈 ざっくり切り込み

 ブリューゲルの「バベルの塔」と大友さんの「バベルの塔」楽しみですね。それにしても、人間の傲慢さを神が戒め、罰を与えた象徴とされる「バベルの塔」、それをいつの時代にも魅かれるのは、罪人としての自虐愛か、マゾヒストの側面を持つ人間のサガなのでしょうかね?。

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バベルの塔

<家族葬ネットの思い>

家族葬ネットの愛甲代表のインタビュー動画です。家族葬の表裏をわかりやすく解説しています。

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◎2017年1月31日 「おくやみ」欄のアーカイブ・ページを開始。最近、著名人のおくやみ欄に掲載される葬儀に家族葬が増えているので、概要をしるため。

◎2017年1月27日 「リンク集」のページを開始。

◉2016年4月8日 「死と終末期の延命治療」のページに「参考資料」欄を設け、「寝たきり老人がいない欧米、日本とどこが違うのか」の記事を追加。

◉2016年1月29日 「家族葬ネットのヘッドライン」を追加。

2015年10月27日 「おくやみと合掌」と「社長のぼやき」を更新。

◉2015年3月7日 全体のデザインをリニューアルしました。

◉別冊宝島「新しい葬儀の本」に家族葬ネットが紹介されました。2015年2月13日発行。

◉家族葬に似合う「ワイン葬」をアップしました。4月1日

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