◆ Hさんのお母様が亡くなられた。
◆ 斎場も火葬場もどうしても混んでいる時期がある。そうなると、亡くなられても何日か待機しなければいけない場合が出てくる。その場合、ご遺体はご自宅か、斎場の安置室でドライアイスを替えながら待つことになる。
安置室の場合、多くは冷蔵庫形式のものだ。冷蔵庫の中は、約5℃なのでドライアイスを入れれば完璧だ。問題は、冷蔵庫なので付き添うことができない。
◆ Hさんの要望は、ご自宅はマンションのため病院から直接、斎場の安置室に運んでほしい。できれば、家族で付き添いたいので、畳の部屋がいい。というものだった。
◆ 話を聞けば、亡くなられたお母さまは、台湾出身の方で、日本に来て大変苦労されて、娘さん達を育てられたそうだ。
◆ 幸いに病院の近くの斎場に8畳間ぐらいの安置室がある。夕方だったが、取り合えず、そこに安置した。敷き布団と掛け布団はこちらで用意した。
◆ 安置室は気に入ってもらったようで、葬儀は身内だけでおこなうので、ここで葬儀もできるのならそうしたいといわれる。とにかく、火葬の日までお母さまと一緒にいたいという。気持ちはよくわかる。
その安置室の二階には、宿泊できる部屋もあるので5~6人の葬儀なら可能だ。
お孫さん達も一晩中、付き添われたようだ。
Hさん: 昨日はゆっくりと母親を見守ることができました。とても落ち着きました。
◆ お母さまのお名前に「桃」という一文字が入っている。花の祭壇に、桃の花を入れてほしいという。3月3日の桃の節句は少し過ぎた。花屋さんは桃の節句に合わせて、桃の木を仕入れるので果たしてまだ残っているかどうか不安だ。むろん、祭壇の生花として使われることは無いので安請け合いはできないが、なんとか揃えてあげたい。
◆ いつも取り引きしている花屋には、売り切れで在庫はなかった。とにかく、何店舗か当たってみた。華道の花も対応しているお店も当たってみたが、売り切れていた。スタッフが、飲食店を主な顧客にしている花屋さんで見つけてきた。
◆ 花の祭壇に、活けるように桃の木を飾った。小ぶりだが、桃の花が彩られた。
Hさん: わざわざ、ありがとうございます。若いころの母は、この桃の花のように色白でかわいい人でした。母も喜んでいると思います。一緒に過ごせて、幸せです。
◆ 狭いながらも、通夜・葬儀と無事に終わり、若いスタッフがご遺族をご自宅へ送っていった。Hさんは感謝の印だと、このスタッフ達に「鰻重」をご馳走してくださった。スタッフが云った「本当に美味しい鰻重だった。何より、ご家族のみなさんが親切だった」と。