家族葬の風「遺骨はセーヌ川へ」

◆ 知人・友人などに送られた礼状にはこう書かれてあった。

 「妻は62歳で永遠の眠りにつきました。1年8ヶ月の闘病の末、自宅で二人の子供に見守られながら、おだやかな表情で旅立ちました。その二人の子供の結婚式も無事に終わらせて、安心して旅立ったことと思います。明るく、賑やかな性格でしたので家の中は余計に静かに感じております。
 本人の強い望み通り、無宗教の形で家族のみで別れの儀式をすませました。遺骨は大好きだったパリのセーヌ川に散骨します。・・・・」

◆ 娘さんから8ヶ月前にメール相談があった。

     Q:    母は以前から「葬式はしないで」「戒名もいらない」「お香典もいらない」「遺骨はお墓に入れないで思い出の地に散骨して」「本当の身近な人にだけ知らせて」という希望を申しております。今は病気の為、自分の意見等言えませんが、ノートに書き残してあります。実家が40年間商売をしている為、義理でお葬式に来る人が多いと思うのですが、母は静かにいきたいそうです。私は母の意見を尊重したいと思っています。又、私も母とのお別れを静かに心に刻む様にしたいのです。他の家族も母の意見を尊重すると言っています。ただ、父が40年も商売をやっている手前、失礼に当たるのではないかと心配しています。私は後日、死亡のお知らせと今までのお礼を書いた礼状を送ればいいと思うのですが。それだけでは失礼でしょうか?その礼状も母が病気との闘いをどんな風に頑張ったか、入院から再入院までの間、旅行に行った事等を娘の私自身の言葉で書きたいのですが可能でしょうか?又、我が家の様に商売をやっていた者が家族葬を行う際のアドバイス等ありますか?又、本人はすぐに火葬場に連れて行ってくれと言っていたのですが、私はそれだけは寂しい気がするのですが。でも、その様な形もありますか?

◆ 返事のメールを送った。

  A:    問題は優先順位です。基本的にはお母様の考えを優先して尊重すべきでしょう。
お母様の考えを整理すると

1)義理で来るような葬儀はして欲しくない。
2)戒名、香典はいらない。
3)身内だけに知らせて欲しい。
4)速やかに荼毘に付し、散骨してほしい。

 以上4点を総合して読みとるとお母様はかなり強い意志で俗世の習慣に捕らわれない、心のこもった送葬を望んでいると思われます。その裏には、残された家族に世間体や金銭的なご負担をかけたくないという思いやりを感じます。

次にご家族とお母様、人間関係のことを整理します。

1)お父様は地元で40年間ご商売を続けられている。
2)ご商売の関係で顧客または取引先、地域の関係者が多数いる。
3)ご家族はその関係者の対応を悩んでいる。
4)お母様は頭の良い方なので近所づきあいも無難にこなし、地域の面倒もみてこられたでしょうから、お世話になったと感謝している近所の方もたくさんおられると予想されます。


 ご質問の礼状だけで失礼にならないかという点ですが、考えられている礼状の中味であれば失礼にはならないと思います。
 問題は、家族だけで他の人を参加させないで葬儀をして、失礼にならないかです。
 以上の点を整理して、お母様の意思を尊重した場合に起こる問題点を羅列します。

1)商売関係の方々から「なぜ知らせなかった、冷たいじゃないか」と電話が鳴り続けるか、香典を持ってお店に訪ねてこられるでしょう。
2)近所の方も香典をもってお店にこられ、線香をあげさせてくれとなるでしょう。
3)これは状況にもよりますが、「お金はあるのに葬儀も出さないで、お金を貯め込んでいる」という陰口が出る場合もあります。残念なことですが、人間は隣の庭は立派に見えるものですから、ひがみ根性も予想しておくべきでしょう。

 さていよいよ本題です。お母様の意思を最大限尊重するかたちで葬儀を考えると以下の対応が良いのではないかと思われます。

1)式場は貸しホールにする。
2)死亡通知が必要な場合は、「故人の遺志で弔問並びにご香典等はご辞退する」旨を明記する。
3)葬儀の様子を写真に撮り、後日礼状にそえる。
4)礼状にはお父様からのお礼とお母様の思い出の写真もそえ、「形式事がきらいな母でしたが、みなさまのお心の片隅に母の生前の姿を思い出して頂けましたら、それがなによりの供養だと存じます。かってなお願いお許し下さい。」などと書き記す。礼状は一週間以内に送付する。早めに準備を。形式、印刷等は弊社が協力します。
5)この場合、ご家族で意思統一しておく必要があります。残されたご家族が納得されることが何よりも必要です。

また、ご質問ください。

◆ 上記のようなやり取りを娘さんとなんどか繰り返し、通夜を迎えることになった。
 葬儀はお母さまのご希望どおり、ご家族とご親族15~16名の葬儀になった。会場には、お母さまが「もし、生まれ変われたなら、パリジェンヌになりたい」という思いをフランス出身の画家、印象派を中心に名画のポスターで飾った。

◆ 葬儀が終わって、葬儀の様子を撮った写真とお母さまの想い出の写真を取り混ぜて8ページの冊子型の礼状を作った。「本人の強い希望により、家族のみの密葬を行いました。手作りのとても心のこもった、温かい式となりました。お通夜のときには、会場には大好きだった美空ひばりの音楽が流れ、参列者全員が納棺から参加し、旅立つ準備を整えてあげる事ができました。何より「押し花」を作る事が大好きでしたので、葬儀の時には参列者により何十本もの花々を飾ってもらい、まるでお姫様の様で母はとても喜んでいたと思います」と娘さんの文章が印象的だった。

◆ お父さまと娘さん達が作った礼状は、葬儀の後に友人・知人・関係者に送付された。心温まる内容に「本当に良かったね」という電話が何本も入ったそうだ。来年、ご家族でセーヌ川へ行かれるそうだ。心優しい娘さんだった。

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