家族葬の風「発見は死後四日目だった」

◆ 電話は今年の2月にあった。

     Q:    まだ、亡くなったわけじゃないけど、私の云うことを聞かない弟なんです。アルコールで肝臓がやられているのに病院にも行かないんです。もしものときに、お願いできますか。
        家族だけで、私と女房だけになるかもしれませんが、小さな式場でお願いします。費用はいくらかかってもかまいません。よろしくお願いします。

 人間はアルコールだけで、そう簡単には死なないだろうと思いながら、でも何か引っかかる電話だった。
 
  
◆ そんな記憶も忘れそうになったころ、お兄さまから電話があった。

     Q:    弟が亡くなりました。今、警察の方が検死をしているところです。死後、四日ぐらい経っているようなんです。先週、気になって弟のところに顔を出したばかりなんですが、そのときは、体も弱っていたので病院に行くように叱ったんです。今朝、気になってアパートを訪ねたら、返事が無く、部屋に入ったら、台所で血を吐いて倒れていました・・・。

     A:    分かりました。準備して、すぐに伺います。

◆ 現場に着いたときには、検死も終わり、布団の中に安置されていた。血の滲んだ顔掛けをはずし、弟さんの顔をおがまさせていただいた。体を動かすと、まだ鼻や口から血が流れ出てきた。
 お兄さまとお兄さまの奥さまは呆然とたたずんでいらっしゃった。

     A:    ご安心ください。後はわたしたちが全て対応しますので、なんなりとお申し付け下さい。

◆ 弟さんは、奥さまとは離婚し、無職のままアパートに一人住まいだった。
 人生には山もあれば、谷もある。谷間の苦しい時期に不運は重なるもので、そんなときにアルコールは苦い思いを一時忘れさせてくれるだろう。しかし、深みにはまると副作用として精神と肉体を徐々に奪っていく。
 弟さんは、人生をあきらめていたようだ。死を覚悟していたようだ。体が崩れていくことを知りながらアルコールを浴び続けた。
 お兄さまは、そんな弟さんの生活を支えながら、更生してくれることを願い励ましてこられた。
 しかし、そんな願いもむなしく、崩れていく肉体は、精神も巻き添いにしながら潰れていったのだろう。

◆ 寝室の6畳間に残る血糊、台所の血糊、流し台の血糊。寝室で大量に血を吐き、のどに詰まった汚物に嗚咽しながら、それを流すために水を求めて、崩れた体にむち打ち、台所まで這いずっていったのだろう。そして、流し台にしがみつきながら、必死に何度も蛇口に手を掛けようとして、かなわぬまま事切れたのだろう。
 壮絶な死、苦しみあがいたその姿。その痕跡をゆっくりと見つめながら、その時の様子を思い浮かべているうちに、ちょっと不謹慎かもしれませんが、わたしは逆に多少救われた気持ちになった。妙な感覚だ。

◆ もがき苦しんだ弟さんの痕跡・姿は、もがき苦しんだ弟さんの人生を集約したもののように思えてくる。苦しくても自分ではどうしようもない人生、つらくてしかたない人生、でも必死に今まで生きてきた、生きようとした。でも、タイムアウト。死は、彼を救ったのだろうか。

◆ 苦しみもがいた痕跡とは裏腹に、死に顔は穏やかだった。やさしい顔をしていた。
 もう苦しまなくていいだよ。お疲れさま。良く闘ったじゃないか。君を見習って僕もがんばるよ。見ず知らずの弟さんだけど、なんだか人生の先輩でもあり、戦友のような気がしていた。

◆ 葬儀の前に彼に部屋をきれいに片付け、隅々まで掃除をした。きれいにして送り出したかった。
 葬儀の後も、アパートを引き払うので家財や不要品も全部処分した。一人住まいでも、不要品、ゴミは2トントラック2台分あった。家財道具も1台分あった。一日がかりでリサイクルセンターに持ち込んだ。

◆ 葬儀のあと、お兄さんと奥さんにスタッフ一同が料亭に招待された。そう、お坊さんも。このお坊さんについてはいずれ書こう。すごく、いいお坊さんだった。

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