◆ 数日まえから相談のあった方ですが、家庭の事情もあり、葬式なし、お見送りは2人だけの密葬でした。
亡くなられたのは、60才前の男性で、連絡をしてこられたのは、数年前にその男性と離婚された元奥さまからでした。
現在はその女性と息子さんが同居し、ご主人は東京で一人暮らしをされていたようです。
ただその男性は数年前から次から次へと癌におかされ、入退院を繰り返していたそうです。
◆ 男性の最後の言葉は、ポツリと吐いた「人生、良いことは何もなかった」だったそうです。
その言葉に対して女性は「息子ができたじゃないの」と慰めたそうです。
その女性は再婚もせず、離婚したあとも、彼の生活と看護を見続けていたようで、涙しながら語る言葉の端々に愛情の深さを感じました。
離婚の原因を知る由もありませんが、ご主人は幸せな人生ですよね。
◆ 葬儀はしないが、亡くなられた当日だけは、いっしょに過ごしたいという要望でしたから、当日は病院から12畳くらいの部屋にご遺体を安置し、知り合いのお坊さまに枕経を上げてもらいました。
私と女性スタッフ2人が付き添いましたが、女性はお坊さまが帰られた後もなんとなく、腰があがらず色々な思いにうなだれているようでした。
私もなんとなくいたたまれなく、つい「形だけですけど、いっしょにお清めをしませんか」と提案してしまいました。
近所の小僧寿司で五人前の寿司とサラダと缶ビールをスタッフが買ってきて、女性と息子さん、そして私達3人でお清めをしました。
◆ お酒も入ったせいか、堰を切ったように女性は泣いたり笑ったりしながら、男性と息子さんへの思い、願いを打ち明けられました。最後に「これでお父さんも痛みから解放されてよかったね」と闘病生活で苦しまれたご遺体に声をかけられていました。
◆ 葬儀屋が葬家を囲んでお清めをするなんて、あまり例が無いかもしれませんが、けっこう盛り上がりました(?)。
◆ 最後に無口な息子さん(23才)に「葬儀屋さんて、なんだかあこがれました。」と云われ、ちょっぴり心の襞に触れることができた葬儀になったと思いました。