どなたさまも大往生を願っているかと思います。大往生とは辞書によれば「少しの苦しみもなく安らかに死ぬこと。また、りっぱな死に方であること」と書かれています。「りっぱな死に方」かどうかは他人の評価ですが、「少しの苦しみもなく安らかに死ぬこと」は、これまでみてきたように他人まかせではかないません。
大往生の条件は「自分の最期は、自分で決める」という一言につきます。
「自分の最期」とは、終末期から死にぎわの逝き方までです。「終末期」とは、明確な定義はありませんが、一般的には老衰・病気・障害の進行により、死ぬことを回避する方法がないと診断され、余命数週間から数ヶ月以内の期間をいいます。
よって「終末期」に入って、どうしようと焦っても遅いのです。じゃ、いつやるか。65才以上の人は「今でしょッ!」
63才で急死された方の葬儀を施行したことがあります。社員の結婚式でスピーチをされている最中に突然倒れて、いびきをかきながら、息を引き取りました。会社の社長さんで、大のゴルフ好きで毎週日曜日にはコースに出かけていようです。明日は我が身です。(詳しくは家族葬の風「披露宴の挨拶で」を)
厚生労働省の発表によると平成24年の死亡者数は、125万6254人で120万人台を越えました。その内、75才以上の死亡者数が3分の2を占めています。
50才代の死亡者数は、約5.3万人。60才代は約14.7万人。70才代は27.5万人。80才代は45.5万人。90才以上が27.3万人です。80才代の死亡者数はダントツですが、伸び率?でいえば、60才代は、50才代に比べると3倍近い死亡者数になり、ダントツの伸びです。60才代を元気に生きぬくことは、一つの節目なのかもしれません。
年金支給年齢の65才を一つの目安として、「自分の最期は、自分で決める」準備を心がけてはいかがでしょうか。では何をするのか?
健康に関する情報は山のようにあふれていますが、終末期のあり方、逝き方などはテレビや新聞ではあまりお目にかかりません。マスコミに頼っていては親身な情報は手にできません。お医者さんも商売ですから、鵜呑みにはできませんよ。情報は自分で探すしかありません。
そこで、おすすめなのが図書館です。現役時代は本屋さんやネット通販でお気に入りの本を購入されていたかもしれませんが、年金生活では余分な出費を控えなくてはなりません。それには、図書館が一番です。読んで手元に置いておきたい本があれば、その後で購入すればいいのです。
おすすめの本を紹介しますので、参考にしてください。
本命)「日本人の死に時 /そんなに長生きしたいですか」
著者:久坂部洋 出版:幻冬舎新書
1)「往生したけりゃ医療とかかわるな/「自然死」のすすめ」
著者:中村仁一 出版:幻冬舎新書
2)「『平穏死』のすすめ」
著者:石飛幸三 出版:講談社文庫
3)「『平穏死』10の条件」
著者:長尾和宏 出版:ブックマン社
4)「医者に殺されない47の心得」
著者:近藤誠 出版:アスコム
5)「サヨナラの準備」
著者:中村仁一・中村伸一 出版:メディアファクトリー
図書館の静けさは、死にぎわから逆算して、今をどう生きるかを考えるヒントを与えてくれるかもしれません。
「死にぎわの逝き方」について、お急ぎの方にエッセンスを紹介します。リビングウイルについてです。リビングウイルとは「自分の死のまぎわにどういう治療を受けたいかを、判断能力のあるうちに文章にしておくことです。日本では、法的な力はありませんが、書いておくことで、意識を失ったあとも、家族や医師に、延命治療についての自分の意思を伝えられます。・・・家族や知人がわかるところに保管します。あなたも、書いてみませんか?」と『医者に殺されない47の心得』で近藤誠先生が、ご自分のリビングウイルを紹介されていますので、引用させてもらいました。参考にされてはいかがでしょうか。
いっさい延命治療をしないでください。
私は今日まで、自由に生きてきました。
64歳まで、好きなことに打ちこんで、幸せな人生でした。
そして、自分らしく人生を終えたいと思っています。
今、私は意識を失っているか、呼びかけに少し反応するだけだと思います。
すでに自力では、呼吸もほとんどできないかもしれません。
このまま命が尽きても、何も思い残すことはありません。
だから、決して救急車を呼ばないでください。
すでに病院にいるなら、人工呼吸器をつけないでください。つけられているなら、はずしてください。
自力で飲んだり食べたりできないなら、無理に、口に入れないでください。
点滴も、チューブ栄養も、昇圧薬、輸血、人工透析なども含め、延命のための治療を何もしないでください。すでに行われているなら、すべてやめてください。
もし私が苦痛を感じているようなら、モルヒネなどの、傷みをやわらげるケアは、ありがたくお受けします。
今、私の命を延ばそうと力を尽くしてくださっている方に、心から感謝します。しかし、恐れ入りますが、私の願いを聞いてください。
私はこの文章を、冷静な意思のもとに書き、家族の了解を得ています。
いっさい延命治療をしないでほしい。
この最期の願いを、どうぞかなえてください。
決して後悔しないことを、ここに誓います。
2012年12月7日
住所
自筆署名 歳 印
証人署名
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