家族葬や葬儀のおりにお持ちする香典は、辞書によると「死者の霊前に供えて、香や花の代わりとする金品。香料」「香のかわりに霊前に供える金品」となっています。
正式には香奠。「香」は「かおり」、「奠」は「神仏などに供える供物」という意味です。
人は死んで中陰(ちゅういん/49日間)をさまよっている間「意生身(いしょうじん)」という姿の見えない存在となり、香りだけを食するので「食香(じきこう)」ともよばれるようです。香りの良い線香やお花を供えたり、その代わりに、それを買って供えてもらうための金銭という意味でしょう。
香典は葬儀に参列するときに、市販の香典袋に現金を入れて、通夜あるいは葬儀のときに持っていきます。通夜と葬儀の両方に参列されるときは、通夜に持っていきます。
香典に使うお札は、一般的に新札を使わないようにと言われています。葬儀は結婚式とちがい、前もって準備するものではありません。香典に新札を使うと前もって死を予測して用意した印象を与え、配慮に欠けるといわれます。一度使用したお札を使います。
このため葬儀マナーの本には、「香典に新札を使う場合は、一度折り目を入れて使いましょう」と書かれています。
しかし、折り目を入れても新札にはかわりないですから、虚礼に近いでしょう。むしろ、昔とちがって現代では新札の入手は簡単にできますので新札も違和感はないのではないでしょうか。わざわざ古いお札をそろえる必要はないでしょう。
家族葬や葬儀は、結婚式とちがい突然訪れます。葬家も慌てていますが、葬儀に参加される会葬者のみなさんも、突然の訃報に慌てて斎場にかけつける人も多いでしょう。
そんなとき、用意した香典袋にお金を入れわすれて、受付に出してしまう人がいます。一番困るのが受付係と会計の担当者です。一応、会計の人はその場で、香典袋を開いて金額を確認しますが、入れ忘れた人に声をかけるのは難しいようです。香典を出すときは、もう一度確認しましょう。
香典はむかし、親族や村落の相互扶助として、貧しい中、米や野菜などを持ち寄ったのが始まりのようです。江戸時代には香典をいただいたら、香典返しの品物を送るのではなく、香典帳に住所、名前、金額を記載し、その方のご家庭に不幸があった場合に昔いただいた香典の金額とおなじ金額の香典を届けていたのが「香典返し」の意味だったようです。
ここには生活の苦しい者同志の助け合いの精神がありました。
現代では、香典をいただいたら、四十九日法要の後に「香典返し」と称して「返礼品」を贈るようになりましたが、本来の「香典返し」という助け合いの意味からずれて、どうも負担の掛け合いになっているようです。
そろそろ、香典返しの「返礼品」を受け取る習慣を止めるようにしませんか。すくなくとも家族葬では、辞退されたらどうでしょう。
方法は、「香典の書き方」に書いていますので参考にしてください。