● もともと香典は、身近な家に不幸があったときに食料をもっていく「食料香典」のことでした。それが、大正期から昭和期にかけて「金銭香典」にかわってきました。また、香典返しも、もともと本家と分家のやりとりで、分家の人が本家に香典や結婚式のお祝いをもっていくと、本家の面目がたったということで倍ぐらいで返していたようです。
● 江戸時代の文献によるとお祝い事や葬式があったときは、近所の人がご祝儀や香典をもってきましたが、このばあいは香典返しはありませんでした。むしろ、香典返しをしたら村八分にあってしまいます。「お返しがほしくてもってきたんじゃねーや。俺の気持ちがわからねーやつとは縁切りでぇー」となっていたのでしょう。
下町の人情が伝わってきます。香典を受けた人は、こんど近所のひとになにかあったら、そのときに同じようにご祝儀や香典をもっていけばよいのです。そのために昔は大福帳(だいふくちょう)や香典帳が各家庭にあったのです。(お葬式をどうするか/PHP新書)