●仏教が日本に伝わり、火葬という方法がはいりました。遺体を火葬にすることを「荼毘(だび)に付す」といいます。インドの古い言葉で火葬にすることを「ジャーピタ」といい、漢字に音訳したものが「荼毘」です。
インドでは古くから火葬がおこなわれ、お釈迦様も火葬でした。日本では、仏教の伝来とともに火葬は高貴な人の葬式として、うけとられていたようです。
●インドのヒンドゥー教のバックボーンは「輪廻転生(りんねてんしょう)」です。仏教もこの考えを受けついでいます。人は生前の業により、何者かに生まれ変わりますから、遺体や骨に未練はありません。お墓も必要ありません。荼毘に付して煙とともに魂は天にのぼるということが、大事な葬送儀礼です。
いまでもインドの人は、家族が亡くなると死体を火葬に付し、焼骨をガンジス河にすべて流します。
●日本で最初に火葬されたのは法相宗の道昭(どうしょう/653年ごろ唐の玄奘三蔵(げんじょうさんぞう:西遊記の三蔵法師)に師事)で、700年のことでした。その後702年に持統(じとう)天皇も火葬されました。それまでは土葬がすべてでした。相当なカルチャーショックを受けたはずです。
●延々と続いた古墳文化は、仏教を積極的に取りいれた聖徳太子を最後に消えていきます。仏教という外来文化の影響も大きかったのでしょうか。ただ、日本で火葬が一般的に普及したのは戦後からです。
最近では、日本でもお墓に埋葬するということに縛られない自然葬を目指す「葬送の自由をすすめる会」などが遺灰を海や山に散骨する取り組みをはじめています。