平成20年5月、神奈川県在住のご家族が、大正生まれのお母様を遺言通りに、ご家族だけの無宗教葬で送られることになりました。
その際にいままで暗中模索してきた「おくり名」をはじめてご提案しました。
通夜の夜、ご家族はお母様のご生涯について、一晩かけて話し合われたそうです。色々な想い出が語られたそうです。
ご主人に先立たれたお母様は戦後の混乱した社会のなか、学生時代に培われた知識と行動力で会社を経営され、お二人のお子様を立派に育てあげられました。そして、お子様達に多くの財産と人生の教訓を遺されたそうです。
「母から哲学を学びました」というご長男の言葉が印象的でした。
晩年も気がむけば、一人でニューヨークへ旅行されたり、知人を誘ってはヨーロッパへ行くなど若い人たち顔負けの行動力を発揮されたようです。
そこで、ご家族は、「飛翔慈母」というおくり名をお母様につけられました。
❶この贈り名には、故人の人生が讃えられ、人柄や行跡が偲ばれます(敬意)
❷故人の愛情と優しさに対するご家族の感謝の気持ちが伝わってきます(謝意)
❸肉体は滅んでも、故人の精神と功績はおくり名に刻まれ、後世の子々孫々にわかりやすく語り継ぐことができます(伝承)
❹しかも無料。これは、ご家族の協力と愛情の結晶です(家族愛)
敬意・謝意・伝承・家族愛、それは命の尊さを重んじ、それを遺された者がお互いに共有する手がかりではないでしょうか。「おくり名」の神髄がここにあります。
不思議な事にこの「飛翔慈母」は、お母様からの「最期のメッセージ」になっているようにも思えるのです。
それは「精神は大空を羽ばたくが如く自由闊達に、心は母の如く愛情豊に生きなさい」と。もしやしておくり名を考えていた所にお母様が参加されていたのかもしれません。