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人はなぜ死ぬのか?

 「生の始まりに、死が必要なのである」と田沼靖一教授の著書「死の起源 遺伝子から問いかけ」(朝日選書)に書かれています。

花の葬儀「家族葬のツボ」の死の起源を表す絵

 それによりますと

 「子孫を残す手段として有性生殖の機構を獲得した生物には、死が遺伝子としてプログラムされるようになった。‥(中略)‥新たにできた受精卵が不良であった場合、それを消去する必要があるからである。生命の誕生という大事件は、死によって成立するといっても過言ではない。生の始まりに、死が必要なのである。」と述べられています。

 わたしたちは、生があるから死が訪れると思っていたのに「生の始まりに、死が必要である」と正反対の見立てです。

 「生のはじまりに、死が必要」というのは、どういうことなのでしょう。

死は、生の守り神

「家族葬」遺伝子のイラスト

 自然界には、遺伝子を傷つける放射線などが存在します。傷ついたり古くなった遺伝子を子孫に遺(のこ)すことはできません。絶滅の恐れがあります。

 そこで、傷ついた遺伝子を持つ細胞は、自ら死ぬように設計されたのです(アポトーシス=自死)。
 わたしたちヒトの体は、約60兆個の細胞からなり(ワォッ!)、その内、約3000億個の細胞が毎日毎日「自死」して、おなじ数だけの遺伝子がコピーされ新たな細胞に入れ替わっているそうです。(気づきませんけど)
 そして、傷ついた遺伝子を消去する「自死」と復元の力がなくなると、わたしたちの体そのものにも、死のスイッチが入ることになります。
 死は、生のためにあるのです。死は、いわば生の守り神なのです。その意味では、生と死が交錯する葬儀は、生命の尊厳を確認する場でもあるのです。

死はこころを育てる

 地球上に住む生物のなかで「葬儀」を営(いとな)むのは、人間だけのようです。

墓場の少女の絵
墓場の少女/ドラクロワ

 貧しいひとが多かったころ、冷たくなったひとの躯(むくろ)は、それは明日の我が身であり、人生の不条理と無常をつきつける姿だったことでしょう。

 ひとは、すべての精神と魂を総動員させて、その死をみつめました。そして、そこから哲学がうまれ、芸術をそだて、宗教にたどりつきます。

 その意味では、死は、人間にとって「文化の母」でもあったのです。死は、生を守り、人間としての、こころを育ててきたのではないでしょうか。

 先人たちがしてきたように、わたしたちもまた死に真摯に向きあいたいと思います。

家族葬のツボ 「こころの鎮め」

 家族葬を終えるたびにフランスの画家・ゴーギャン(1848年〜1903年)の言葉を思い浮かべます。

 かれは、西洋文明に絶望して南太平洋のタヒチにわたります。しかし、かれが夢みた楽園は、そこにはありませんでした。絶望したかれは、死を決意して、遺書がわりに下記の大作を描きあげます。

家族葬で思い浮かべるゴーギャンの絵

 そして、この絵の左上に書き添えたのが、この絵のタイトルにもなった、あの有名な次の言葉です。

   我々はどこから来たのか、

   我々は何者か、

   我々はどこへ行くのか

 ゴーギャンは何を思い、だれにむけて、この問いを発したのでしょうか。

 かれは当時、急激に発達した近代文明に翻弄(ほんろう)された一人でした。怒りと絶望にもがき苦しんでいました。貧困と病いが追い打ちをかけるように彼を襲い、希望は絶たれ、失意のどん底でキャンバスに筆をいれます。もはや残された安住の地は、死をおいて他にはありません。

 かれは、(彼と人類の)こころの鎮(しず)めをこの絵に託したのかもしれません。

家族葬で祈る男性

 しかし、ゴーギャンの問いから、100年以上たちますが、いまだにその答えをしりません。

 むしろ、こころの荒廃は、ゴーギャンの時代よりもひどくなっているのかもしれません。そして、葬儀は、儀礼化し形式化して、その力と存在意義を失おうとしているように思えます。

 いま一度、葬儀の力を取り戻すことが必要になっているのかもしれません。「家族葬」の鼓動が、高鳴ります。

家族葬の使命

花の葬儀「家族葬の使命」に驚く女性

 いま日本では、年間に100万人以上のひとが亡くなられ、その80%以上が、病院で最期をむかえています。しかし、病院は「死に場所」の施設ではありません。死が、家族の手から離れようとしています。

 そして、葬儀そのものが、消えようとしています。‥‥‥

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