密葬
密葬は本来、本葬にたいする密葬という考えで、年末や正月に亡くなられた場合、葬儀があげられないので、とりあえず密葬にし、正月があけたら本葬にするというものです。
しかし、最近では故人の遺志もあり、葬儀などの儀式をしないで火葬だけにする密葬もふえてきました。
密葬の特徴_________________
密葬は、至ってシンプルな葬儀です。参列者はご家族だけの場合が多いです。
密葬は、通夜も葬儀も儀礼的なことは一切はぶき、病院から自宅にご遺体を移送し、一晩ご家族が付き添い、翌日荼毘に付します。
密葬の場合、宗教儀式を挟まなければ、文字どおりの「無宗教葬」かもしれません。
葬儀のベースにあるのは、死者への鎮魂です。ちゃんと弔わなければ死者は成仏できずに、残された者に厄をもたらす、という原始的な宗教観や恐れから、鎮魂の儀式として葬儀が発展してきた側面があります。まだ死の原因と判定を科学的にとらえることが出来なかった太古の時代ではうなずける話です。
このような一切の宗教的な観念やしきたりに頼らないという考えも一つの道です。
● 密葬の費用は、家族葬ネットでは19万円4千円(税込)で「花の密葬」をおこなっています。
棺、骨壷、納棺セット、位牌、旅支度、別れ花、送り花、枕飾り、安置室料、搬送費(寝台車と霊柩車)、ドライアイス、役所の届出などが全てパックになっています。火葬代だけは別料金になっています。
密葬の実例_________________
お父様は闘病生活も長く、治療費もかさみ、余裕のある葬儀はできないという。奥さまは、悲しみに項垂れていた。二人の綺麗な娘さんが事情を説明してくれた。
● お墓は田舎にあり、菩提寺もそこにあるので、密葬にして田舎でお経をあげてもらうという。祭壇も葬儀も必要なく、家族でゆっくりと付き添い、送り出したいという。また、この団地に引っ越してきたばかりなので、会葬者も親戚だけのようだ。それなら、ご自宅でも充分ですよといった。
● 「葬儀にとって最低限必要なものはなんですか」と娘さんに尋ねられた。「余裕があればお金をかけてもいいし、見栄を張らなければ、質素な葬儀も心がこもっていれば充分なんですよ。一番大切なのは、残ったご家族の心の整理です」と答える。
● 火葬費用までいれて総額23万円の見積もりを伝えると、「それでお願いします。実は他の葬儀屋さんには三倍近い見積もりを出されたんです」と娘さんが見積もり書を見せてくれた。
● それでも、お母さまは不満そうな素振りだった。よくよく話を聞いてみると「お坊さんも呼ばないで葬儀をしていいものだろうか」と悩んでおられた。親戚の手前のこともあったのかもしれない。娘さん達が云った「お母さん、その話は済んだ話でしょ。お父さんは、生前から無宗教で質素にと云っていたでしょ」と。
● 父と母と子供達のそれぞれの想いは、一致しない場合も多い。それぞれがそれぞれの事を思いやっていても立場の違いから、だからこそ結論が違ってくる場合がある。
● ある程度の結論が出て、ご自宅を後にしたその夜にお母さま(奥さま)から電話が鳴った。「やっぱり、お坊さんを紹介してほしい」と。そして、翌朝早くに娘さんから電話が鳴った。「すいません。母が取り乱して、お坊さんの件はキャンセルにしてください」と。
● 出棺の当日、親戚の方々が集まっていた。合掌して納棺式を始める。皆さんで旅支度をしてもらう。それぞれ順番に清浄綿で顔や手足を清め、生前のご苦労を癒す。足袋をお履かせし、脚絆、手っ甲と全員で紐を結び整える。奥さまに数珠を手に掛けてもらう。最後に全員で経帷子を整えてもらう。
● 納棺を終えた後に故人を囲み、全員で般若心経を読経してもらう。
たまたま、故人の枕元に般若心経を写経したものが供えられていた。奥さまは時々唱えられていたようだ。奥さまには、「お坊さんはいないけれど、般若心経をみなさんで唱えてもらえれば、りっぱな供養になりますよ」と伝えた。娘さん達も快く了承した。
奥さまは、目をつぶり、しっかりと唱和されていた。
● 前日に奥さまには「ご主人の耳元で、お疲れさまでしたと色々お話しをしてあげてはどうですか。それも大切な供養ですよ」と云って別れたが、今朝「昨日ずっとお話ししてあげてたんですが、なんだか気持ちがすっきりしました」と奥さまに云われる。
● 娘さん達が用意していたたくさんのお花を棺の中へと全員で飾る。故人の穏やかな顔が印象的だった。奥さまの顔もすっきりしたような落ち着きをしていた。少しは、心の整理がついたのだろうか。
● 火葬の待ち時間に親戚の方が云った「どんな葬儀になるかと心配だったが、良い葬儀でした」と。
別れ際に「また、色々と相談にのっていただけますか」と娘さん達が云った。
密葬の問題点_________________
密葬は一般的な葬儀からすれば、かなり変則的な葬儀ですから、「変わり者」などと後から揶揄されないようにご家族あるいはご親族の了解をとっていたほうが無難かも知れません。何よりもご家族の意思統一が大切です。
葬儀にかけた費用の大小で、死後の世界が決まるわけではありません。本人の日頃のおこないが、むしろ大切です。
澄んだ水は、どんな高額なワインよりも優とも劣らない極上の潤いをもたらす場合だってあるのです。
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