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● 4年前にお母様の葬儀をおこなったご長男の奥様から電話があった。
● 「また、お願いすることになると思います。まだ亡くなっているわけではありませんが、その時にはよろしくお願いします」と奥様の弱々しい声が電話口から聞こえた。「ど、どなたなんですか」とたずねた。葬儀をする対象者が頭に浮かばなかった。「主人が癌なんです」と奥様がいった。 一瞬、4年前ことが脳裏をよぎる。喪主だったご主人は明るくて、快活で身体もがっちりしていて、人一倍元気そうだった。明るい家族、親族のイメージが残っていた。
● 一週間経っただろうか。ご主人はご自宅で永眠された。葬儀の打ち合わせにご自宅へ向かった。奥様とお子さん、お孫さんたちがお父様を囲んでいた。
● ご主人は、スキルス胃癌だった。スキルス胃癌は、がん細胞が短期間に増殖して、胃全体に広がり、発見されたときには手術による切除が不可能になっている場合が多いそうだ。悪性の癌だ。 ご主人は、まだ67歳。人生を終える年でもないし、これから人生を楽しむ年だろう。
● 闘病生活は、1年10ヶ月続いたそうだ。ご主人は、癌の告知から癌との闘いを自らのブログに細かく記されていた。そのブログは、同じ癌を患っている患者の方やそのご家族たちから、多くのアクセスがあったそうだ。ご主人の癌への挑戦は、癌患者達の参考になっていたようだ。 そのブログのタイトルは「かわもと文庫」。アドレスは以下の通り。奥様の了解を得てリンクします。 http://www5a.biglobe.ne.jp/~katsuaki/
● ご主人の遺書には、葬儀についても事細かく記されていたようだ。葬儀は家族葬ネットに頼むように指示があったそうだ。ネットを調べられて、「愛甲さんはまだ、葬儀をしているようだから」と書かれていたようだ。
● 4年前の葬儀についても、ブログに書かれていた。気に入ってもらったようだ。ブログには、「がんと向き合う」という癌との闘いの他に、「がん患者の終末期日記 『明日の風』」や小説、エッセイなど数多くのコンテンツでうめられている。壮絶な手記だ。
● 今回の葬儀につては、遺されたお子さん達が、お父さんの遺志をついでブログを始められ、そこに詳しく書かれている。タイトルは「かわもと文庫〜その後〜」。アドレスは下記の通り。 http://72619663.at.webry.info/
● ご主人は、ご自分の葬儀にあたって、一冊のアルバムを用意されていた。それは、闘病生活の合間をぬって、奥様といっしょに旅をされたスナップ写真だ。わたしは、ご家族の了解を得て、このアルバムの写真をパネルに貼って式場に飾った。
● 葬儀の前日、事務所で写真を日付順に並べて張った。だんだんと痩せていくご主人の姿が浮かぶ。そして、その傍らに寄り添う奥様の姿があった。二人は、高校時代の同級生だったそうだ。ご主人の友人は、美人であこがれの彼女をご主人が奪っていったと当時の想い出を語っていた。 その美しさはいまでも変わりないが、ご主人に寄り添い微笑む表情は、一生懸命に何かをこらえているようにも思えた。 ● 死を宣告されて、あきらめず向かい合うご主人も素晴らしいが、愛する人を失うことを宣告された奥様もまた、死と向かい合っていた。1年10ヶ月の闘病生活は、奥様にとっては誰にも語ることができない、理解してもらえない、心の闘いだったのかも知れない。
● ご主人が葬儀にアルバムを用意された理由はなんだったのだろう。死と向き合った1年と10ヶ月は、人生の集大成だったのか。その人生を形作ってもらえたのは、愛する妻がいたからだと。家族がいたからだと。感謝の気持ちを表したかったのだろうか。「ありがとう」と。
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